2017年10月7日土曜日

【時習26回3-7の会 0673】~「塩野七生著『逆襲される文明/日本人へⅣ』を読んで」「09月30日:名都美術館『美人画の粋と雅』【後期】展&パラミタミュージアム『平山郁夫』展を見て」

■皆さん、お元気でお過ごしでしょうか。【時習26回3-7の会 0673】をお送りします。
 今日最初の話題は、最近読んだ塩野七生著『逆襲される文明/日本人へⅣ』についてご紹介する。
 本著は、文芸春秋201311月号~201709月号に掲載された同誌巻頭を立花隆氏等と共に毎号掲載されるessay集にup された彼女の essay の纏めの第4弾である。
 今日は、1冊の文春新書になった彼女のessayの中から一つご紹介したい。

【逆襲される文明/日本人へⅣ】
ll / なぜ、ドイツ人は嫌われるのか〔P.124-28
 EU(欧州連合)の中で、ドイツが唯一の勝者であることは明らかだ。〔中略〕
 しかし問題は、このドイツに指導力を発揮する勇気が有るのか無いのか、にある。
 結論を先に言ってしまえば、無い。
 歴史的にも気質的にも、無い。
 何故なら、指導力を発揮するには、勝つだけでは充分でなく、「勝って『譲る』」心構えが必要になって来るからである。
 勝ってい乍ら『譲る』とは、敗者の立場にも立って考えるということで、これはもう想像力の問題であり「一寸の虫にも五分の魂」があることを理解する、「感受性」の問題である。
 徹底的に相手を打ちのめすのでは、勝ちはしても、その相手まで巻き込んでの「新秩序」づくりは出来ない。
 つまり、多民族から成る(【小生補足】EUの様な)共同体の leader にはなれない。
 多民族国家とは、考え方も生き方も違う民族が集まって、そのどの民族にも利益を齎すことだけは確かな根元的な一つの方針、ローマ帝国の場合だと、「パクス・ロマーナ (ローマの平和)」を打ち立て、それに反しない限りは各民族とも自由という、緩やかでしなやかな柔構造社会のことである。
 これが200年にも亘って実現出来たのも、「勝者であるローマが」、勝っただけでなく、その後では『譲った』からであった。
 ドイツ人には、歴史的にも気質的にも、これが無い。〔中略〕
 自己制御も不得手なので、一旦走り出すと止まらなくなる。
 私がナチス(Nazis)を憎悪するのは、600万ものユダヤ(Judea)人を殺したからというだけでなく、600万もの人間を、快感でもあるかの様に、冷酷に陰惨に肉体的にも精神的にも追い詰めて行った遣り方にある。
 この想いは、昨今問題になっているギリシアへの、ドイツの対処を見ていても感じた。〔中略〕
 ギリシアの論理学の創始者アリストテレス(Aristoteles(384-322))は言っている。
  「論理的に正しくても、人間社会では正しいとは限らない」
 この balance 感覚である。〔中略〕
 この中庸の精神が現代のドイツ人には無い。〔中略〕
 私には、ドイツ人の心の奥底に潜んでいる、他の国々の人々への猜疑心、に拠るのではないかと思えるのだ。
 平たく言えば、騙されることへの恐れ、である。〔中略〕
 ドイツ人は結構騙され易い民族で、その好例が「免罪符」だった。〔中略〕
 ルター(Martin Luther(1483-1546))に始まった Protestantism は、騙し取られたカネへの恨みから始まったのであった。〔中略〕
 メルケル(Angela Dorothea Merkel(1954.07.17- ))の厳しくも真面目な顔をTVで見る度に、この種の話を思い浮かべる。〔後略〕

[01]塩野七生『逆襲される文明

[01](参考) 2012年に読了した/同『ローマ人の物語』文庫全43
                  

【小生comment
 小生、彼女の作品は司馬遼太郎の作品と並んで大好きである。
 特に嘗て2作共に読破した、古代ローマ帝国について綴った「ローマ人の物語」と、Venezia共和国の千年の歴史を綴った「海の都の物語」は小生の宝物になっている。

■続いては、去る0930()に尾張の一宮市に住んでいる孫娘(長男の長女)の運動会の応援に行ったついでに、名都美術館『美人画の粋と雅』【後期】展と、三重県菰野町にあるパラミタミュージアム『平山郁夫 (1930.06.15-2009.12.02)』展を見て来たので、その模様についてご紹介する。

【名都美術館『美人画の粋と雅』【後期】展】1205分~1235
 本企画【後期】展での美人画の展示数は、総数75点のうちの49点。
 内訳は、上村松園(1875-1949) 7点、鏑木清方(1878-1972) 7点、伊東深水(1898-1972) 22点、伊藤小坡(1877-1968) 7点、橋本明治(1904-1991) 3点、下村観山(1873-1930) 1点、菊池契月(1879-1955) 1点、大山忠作(1922-2009) 1点、の計8人/計49作品。
 早速御覧頂きたい。

[02]名都美術館入口の本企画展『美人画の粋と雅』看板
                  
[03]上村松園『美人春遊図』大正末期

[04]同『わか葉』1940
                  
[05]伊藤小坡『落葉志ぐれ』1933年頃

[06]同『茶の湯』1933年頃
                  
[07]同『青楓』1933年頃

[08]鏑木清方『蛍』1940
                  
[09]同『雪見舟』1950

[10]伊東深水『清涼』1956
                  
[11]同『立秋』1960年頃

[12]橋本明治『舞』1968
                  
[13]同『鳥と少女』1971

【小生comment
 本当に素晴らしい企画展だった。
 上村松園、伊藤小坡、鏑木清方、伊東深水、橋本明治の美人画は、夫々の originality が前面に出た傑作ばかりだ。
 ご覧の添付写真の絵の様に、何れも気品があって綺麗な作品ばかりである。

【パラミタミュージアム『平山郁夫 (1930.06.15-2009.12.02)』展】1525分~1600
 本企画展は、平山郁夫の画期的な画業となった「Silk Road」作品を始め、「日本の美」や、画伯の原点と言える「故郷や瀬戸内海」等を描いた作品約100点が展示されていた。

[14]パラミータミュージアム駐車場の本企画展案内看板
                  
[15]同ミュージアム正面玄関の一部

[16]同ミュージアム入口にて
                  
[17]同ミュージアム 本企画『平山郁夫』展leaflet

[18]平山郁夫『吉備路の春 国分寺』1990
                  
[19]同『熊野古道 勝浦』1991

[20]同『厳島神社 宮島』1993
                  
[21]同『求法高僧東帰図』1964

[22]同『パミール高原を行く』2001
                  
[23]同『パルミラ遺跡を行く・朝』2006

【小生comment
 平山郁夫の作品は、小生大好きで何回見ても感動する。

【後記】一昨昨日1004日は『中秋の名月』。
  『中秋の名月』は旧暦八月十五日の月を言うから今年は一昨昨日(1004)の月を言う。
因みに満月は明後日(1006)
 だから1004日の『中秋の名月』は「十三夜」。
 今日も virtual real な世界で拙句が浮かんだ

  名月を 君と愛()でむや 夢の中  悟空

 「十三夜」でもう一句浮かんだ‥

  麗しや 蒼き月夜の 十三夜  悟空〔了〕

[24]中秋の名月20171004
                  
では、また‥〔了〕

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